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 2022年のスーパーフォーミュラ最終大会、土日で2戦を行うJAF鈴鹿グランプリの金曜フリー走行が10月28に日に行われたが、ランキングトップでチャンピオン大本命の野尻智紀(TEAM MUGEN)がまさかの16番手となり、本人も絶不調を認める波乱の最終大会幕開けとなった。

 ランキング2位の平川亮(carenex TEAM IMPUL)に32ポイント差を付けてトップを独走している野尻智紀。事前の予想では、今季の安定した野尻のパフォーマンスを考えれば日曜の第10戦を待たず、土曜の第9戦でタイトル決定が濃厚とも思われていたが、金曜の走行で野尻はまさかの16番手に低迷。一方の平川は5番手、サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)は3番手の好調スタートだけに、予想外の展開となったのだ。

 4月に同じ鈴鹿で行われた第3戦鈴鹿では、野尻は金曜走行からトップ、予選でもポールポジション(決勝は雨で2位)と、ドライコンディションで圧倒的なパフォーマンスを見せていただけに、第3戦に近い気温、路温となった今回の金曜走行で大きく低迷してしまったのが、謎でしかない。

「結果どおり、すごく調子が悪いです。走り初めの最初の段階から『これは結構、ヤバイやつだなあ』という感覚はありました。それで真剣に走って、あの順位(16番手)なので、どうしようかなという感じですね。最後のニュータイヤも、いっぱいいっぱいのアタックです」と、走行後に集まったメディアに話す野尻。

「クルマが曲げられないというか、何もしていないのに勝手にロールが増えている感じで、クルマ全体で空力を得ている状態ではないですね。すぐ、こうなってしまう(身体で片足に体重を載せて、どちらかに偏っている状態)感じです」

「気温と路温は第3戦(鈴鹿)と同じくらいなのですが、この時期の鈴鹿は毎年、気温と路温だけでは片付けられないなにかがあるんだろうなと、僕は思っています。あと、ちょっとしたセットアップも変えて来たりしているので、そのあたりが悪い方向に行ってしまっているのもあるのかなと思います」と続ける。

 野尻の相棒ともいえる、TEAM MUGENの一瀬俊浩エンジニアも「今年一番の(セットアップ)大外しです」と、認める。

「順位が物語っているように、めっちゃクルマが遅いですね。バランス面で一貫性がないので、安心して攻められないですよね。今季はどこのサーキットに行っても自信を持って(コーナーに)飛び込めるし、回頭性もあるクルマというのが、ちょっと崩れはじめています」と、一瀬エンジニア。

 それでも、今季これまでのレースでも、走りはじめの不調からレースまでになんとかクルマを仕上げてきた。今回も、ここからのリカバリーに期待したいところだが、野尻の見方は現実的だ。

「トップはまだ見えないですけど、コンマ4~5秒くらい上がれば、ある程度戦えるゾーンには行けるかなという気はしています。今のクルマは自分のなかではかなり悪いレベルにいるので、そこからトップまで良くするのはかなり難しいですけど、戦えるところに入るのはそれなりに可能なのかなと思うので、目先のサーゲットはまずはそこに置く感じですね」

 そのなかで、さらに思わぬポジティブ要素も加わることになった。

 走行前に行われた共同会見では、「去年の最初のタイトル争いのときよりもプレッシャーを大きく感じている。だいぶピリピリしている」と話していた野尻。実際、金曜のフリー走行では焦りもあったという。

「走っているときは焦っていましたよ。いつもはしないようなミスも(今日のフリー走行で)していたし、『いつもの普通はどんなんだったっけ?』っていうのは感じながら乗っていましたね。いつも通りの、いつもが分からない」

 だが、その不安も、あまりのクルマの出来の悪さが忘れさせることになった。

「逆に悪すぎて、開き直るしかないなと(苦笑)。それくらい調子が良くないです。『このタイミングでこんな状況になっちゃうの?』って思いましたよ」と野尻。

「表彰台圏内とかを狙えそうだと(タイトルを争う)相手を気にしなくて済むけど、このままだと、相手の順位ばかりを気にするような状況になる。そこからどれだけ、自分たちのパフォーマンスを引き出すかというところにきちんと自分自身を置いておかないと、痛い目を見るなという感じはしています。なかなか自分のコントロールが難しいところはありますね」

 今季最大のピンチがこの最終戦で訪れてしまった野尻智紀とTEAM MUGEN。今季のチャンピオン争いは、すんなりとは決まらなさそうだ。

2022年スーパーフォーミュラJAF鈴鹿グランプリ金曜日
オンザレースのようなスムーズな回頭性と走りが特徴的だった野尻智紀だが、今回の鈴鹿ではセットアップを大外し。

2022年スーパーフォーミュラJAF鈴鹿グランプリ金曜日
金曜の走行後に話込む野尻智紀(右)と、一瀬俊浩エンジニア(左)、田中洋克監督(中)