10月30日、鈴鹿サーキットを舞台にして行われた2022年全日本スーパーフォーミュラ選手権の第10戦。今シーズン最後の戦いということで、各チーム・ドライバーとも好結果を目指して激しいバトルが展開されたが、前日の第9戦とは打って変わって大荒れのレース展開となった。
31周のレースでは途中に2度のセーフティカー(SC)が導入されたほか、細々としたアクシデントやトラブルなどが頻発したが、それらに関わったドライバーたちに状況を聞いた。
■スタート直後にコースオフの福住仁嶺「完全に自分のミス」
スタート直後の1コーナーで姿勢を崩して、コースオフを喫してしまった福住仁嶺(ThreeBond Drago CORSE)。18番手から好ダッシュを見せポジションを上げていったが、勢い余ってのコースオフ。1度目のSCの要因となってしまった。
「スタートは昨日よりも良かったんですけど、1コーナーのラインどりというか、スタートが良かったということで、勢いよく前に出たいという気持ちが出過ぎた部分がありました。外側から大きくまくっていこうと思ったら、全然コースが足りなくて……。縁石に触れちゃったときに、クルマがハイサイドのようになってしまいました」
「これは本当に自分のミスで、今後やってはならないことですし……ああいうミスをしてしまったことに対して、けっこう落ち込んでいます。チームには申し訳ない気持ちでいっぱいです」と、肩を落としていた。
■SC明けで失速の笹原右京「なぜかアンチストールが」
福住のコースオフによりSCが導入、マシン回収はすぐに終わって3周目に入るところでリスタートとなったが、ここで日立Astemoシケインの立ち上がりで突然失速してしまったのが3番手を走っていた笹原右京(TEAM MUGEN)だった。
「なぜかアンチストールが入ってしまいました。あの時はただ、シフトを変えただけで、異常なくらいエンジンの回転数を下げていたとか、そういったこともなかったので、自分もビックリしました」
「アクセルを踏んだらいきなり駆動が抜けて『ギヤとギヤの間に入っちゃったのかな?』とか考えたんですけど……『え、アンチストール? そこで出る?』と思いました。仕方がないですが、今年1年を振り返ると、そういうクラッチだったりギア周りのトラブルが出て、1年の最後に全てそれが出ちゃったなという感じでした。それが残念でした」
このトラブルで2つポジションを落としてしまい、前半は坪井翔(P.MU CRUMO・INGING)を追いかける展開に。12周目のシケインでインから抜きにかかったが、そこで2台がわずかに接触し、笹原はフロントウイングを破損。これで緊急ピットインを余儀なくされ、最後尾まで後退した。
「シケインではイン側にいて、ブレーキングの段階では僕の方が前にいました。そしたら、彼がブレーキをリリースしてきた時に、思ったより接近してきて、僕としてはこれ以上インに行ったら縁石を飛び越えるくらいの感じでした」
「もちろん、当たりたくはないので、最大限にブレーキングをしてハンドルもいっぱい切ったんですけど、フロントウイングにダメージを受けてしまいました」
笹原は「一度、悪いことが起きると、とことん悪いことが連鎖してしまったなという感じでした」と語り、前日とは打って変わって元気のない様子だった。
■2度のミスに「ペースが良かっただけに悔しい」と佐藤蓮
1回目のSC明けで笹原が加速しないトラブルに見舞われていた後方で、15番手を走行していた佐藤蓮(TEAM GOH)は、シケインで単独スピンを喫してしまっていた。
「(SC解除時に)前との間隔が空いていたので、ちょっと詰めようと思って縁石をカットしていったら、内側のタイヤが浮いてしまって、イン巻きしてスピンという形になってしまいました」と佐藤。
さらに19周目にはバックストレートから130Rにかけたバトルの中で、ジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)と接触し、フロントウイングを破損。そのまま緊急ピットインとなった。
これについて佐藤は「ジュリアーノ選手と競り合っている中で、バックストレートで並びかけたところで、進路がなくて、彼の右リアタイヤと僕のフロントウイングが接触してしまいました。それで、僕のウイングが脱落してしまいました」と状況を説明。ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得したものの、本人としても後味の悪い最終戦となってしまったようだ。
それでも24周目にはファステストラップを記録するなど、レースでは速さを見せていた佐藤。「ファステストラップもとれましたし、ペースとしては昨日よりも良い状況だっただけに、悔しい気持ちはかなりありますが、今後に向けて良いアイテムもたくさん見つかったので、そこはポジティブだったかなと思います」と締めくくった。
■ジュリアーノ・アレジ、予選ではQ2進出を果たすも……
午前中の予選では今季3度目となるQ2進出を果たしたジュリアーノ・アレジ(VANTELIN TEAM TOM’S)。決勝では久しぶりのポイント獲得を目指したが、アクシデント続きの決勝レースとなってしまった。
12周目には後方から仕掛けてきた松下信治(B-Max Racing Team)とシケインで接触。これで松下は外側のスポンジバリアにクラッシュしリタイアとなった。アレジ自身はダメージがなくレースを続行。レースコントロールのジャッジとしては“レーシングアクシデント”だった。
これについてアレジは「僕としてはスペースを空けたつもりだったけど……ちょっとリプレイを見ていないから、具体的なコメントは控えたい」とのこと。
「接触してしまったことは、すごく残念」と語ったアレジは、決勝後のシーズンエンドセレモニーでの登壇を待っているタイミングで、松下と話し合う姿が見られた。
なお、19周目の佐藤との接触については「バックストレートから130Rにかけて、バトルをしていた時に、接触されてしまった。ぼくのリヤタイヤにヒットしたけど、特に影響はなかった」とアレジ。
「予選はポジティブだったけど、決勝が残念な形になってしまった。まずはファクトリーに帰って今回起きたことを分析して、ちゃんと学ぶべきところは学んで、それらを来年につなげていきたい」と、今回の経験を次に活かそうとしていた。
■接触リタイアの松下信治「彼が謝ってきたので、それ以上言う必要はない」
一方、アレジとの接触でリタイアとなってしまった松下。130Rからシケインにかけて並びかけようとしていたが、そこで接触が起きたようだ。
「僕は(シケインで)インに飛び込もうとしたんですけど、彼が締めたので、アウト側にいきました。そうしたら、彼がアウト側に戻ってきて、タイヤとタイヤが当たってしまいました。でも、レース後に彼が謝ってきたので、それ以上言う必要はないかなと思います」と松下。アレジとの話し合いも済んでいることもあってか、あまり多くは語ろうとしなかった。
今季はスーパーフォーミュラ初優勝も飾った松下だが、シーズン最終戦は不運な形でのリタイアとなってしまった。「(シーズンの終わり方としては)残念ですね。完走したかったですし、ポイントも獲りたかったので。まぁ、また頑張ります」と締めくくった。