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 9月23~25日にイタリア伝統の高速トラック、モンツァで開催された2022年TCRヨーロッパ・シリーズ第6戦は、雨絡みの予選で自身約2年ぶりのポールポジションを獲得したジョン・フィリピ(セバスチャン・ローブ・レーシング/クプラ・レオン・コンペティションTCR)が、続くレース1でも一時ポジションを奪われながらも逆襲に転じ、難コンディションのなかポール・トゥ・ウインを達成。リバースグリッドのレース2は、選手権リーダーのフランコ・ジロラミ(コムトゥユーPSSチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)が制し、最終戦を前にしてタイトルに王手を掛けている。

 8月末にドイツのニュルブルクリンクで開催された第5戦も、悪天候と濃霧の影響により急遽シングルヒートの週末になっていたが、この高速モンツァ戦も各ドライバーとも気象コンディションに翻弄される展開となった。

 プラクティスではエンジン不調により2回目のセッションでペナルティ覚悟の換装を強いられながら、ジャック・ヤング(プロフィ・カー・チーム・ハルダー/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が連続トップタイムを刻んで週末が始まると、続く予選Q1は直前の雨により“ウエット宣言”が出されるなかでの勝負に。

 しかしワイルドカード枠を含めエントリー全25台のほとんどがスリックタイヤを装着してトラックインすると、まずはコムトゥユー・レーシングがサポートするマルコ・ブッティ(エリート・モータースポーツ/アウディRS3 LMS)が、ジロラミを従えトップタイムをマークする。

 こうして各車がレコードラインを走行したことで、続くQ2は路面状況が改善。ドライだったFPのレベルに並ぶタイムアップが期待されたが、ここで無情にもふたたびの降雨となり、Q1タイムより数秒遅いラップでのポールポジション争いに。

 この機に乗じて早めのフライングラップを敢行したフィリピは、2度目のアタックで2分03秒731を記録し暫定ポールポジションを獲得、その後はターン2でのイエローフラッグや雨量の変化もありタイム更新を果たすドライバーは現れず。2番手ニコラ・バルダン(ターゲット・コンペティション/ヒョンデ・エラントラN TCR)に対し0.990秒差、セカンドロウ3番手のヤヒム・ガラシュ(ヤニック・モータースポーツ/ヒョンデ・エラントラN TCR)には1.050秒の大差でポールポジションを獲得した。

 引き続きずぶ濡れのトラックで争われたレース1は、スタートからヒョンデ陣営が仕掛けると、オープニングラップのシケインでインサイドにいたバルダンが首位に浮上。続くクルヴァ・グランデで喰い下がったフィリピがふたたび前に出るも、セカンドシケインのインサイドも抑えたバルダンがトップでコントロールラインに帰ってくる。

 その後方では激しいポジション争いが繰り広げられ、序盤戦の攻防に敗れたミシェル・ハルダー(プロフィ・カー・チーム・ハルダー/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が最終コーナーで飛び出しグラベルへ。車両回収のためここでセーフティカー(SC)が発動される。

レース1スタートでは、2番手ニコラ・バルダン(ターゲット・コンペティション/ヒョンデ・エラントラN TCR)が一時首位に躍り出る
レース1スタートでは、2番手ニコラ・バルダン(ターゲット・コンペティション/ヒョンデ・エラントラN TCR)が一時首位に躍り出る
エンジン換装を経ながら、FPで連続首位を記録したジャック・ヤング(プロフィ・カー・チーム・ハルダー/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)は、雨に足元を掬われる
エンジン換装を経ながら、FPで連続首位を記録したジャック・ヤング(プロフィ・カー・チーム・ハルダー/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)は、雨に足元を掬われる
「ここまで集中的に磨いてきたレインセットも功を奏した」とR1勝者のジョン・フィリピ(セバスチャン・ローブ・レーシング/クプラ・レオン・コンペティションTCR)
「ここまで集中的に磨いてきたレインセットも功を奏した」とR1勝者のジョン・フィリピ(セバスチャン・ローブ・レーシング/クプラ・レオン・コンペティションTCR)

■レース2はクラッシュにより赤旗終了。ジロラミが勝利を飾る

 2周後のリスタートで狙っていたフィリピは、セカンドシケインをカットしながらもバルダンを攻略することに成功し、ここで首位奪還を果たす。SCにより2周増加の12周勝負となった後半も、ポジションを堅守したフィリピがレインでの勝負を制し、ガラシュにも先行されたバルダンはファイナルラップを目前にして14番グリッドから猛追を見せた第4戦ウイナー、マイク・ハルダー(プロフィ・カー・チーム・ハルダー/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)にも逆転を許し、失意の4位でチェッカーを受けた。

「本当に素晴らしい1日になった。ニュルでの困難な週末のあと、これほどのパフォーマンスが発揮できるなんて予想外だったよ。今朝からクルマはとても良かったし、セーフティカーを前後してニコラ(・バルダン)と興味深い勝負ができた」と、満足げに振り返ったフィリピ。

「リスタート後に彼を追い越すチャンスは一度しかなかった。後続も非常に速く、もしあそこで前に出なければ僕が飲み込まれていたはずだ。その状況をミラーで確認できたしね。レースではつねにこうした機会が巡ってくるとは限らないし、今回は心から楽しめたよ」

 続いて予選Q2トップ10リバースにより、クリム・ガブリロフ(ボルケーノ・モータースポーツ/クプラ・レオン・コンペティションTCR)が最前列でスタートを切ったレース2は、4番グリッドからスタートしたポイントリーダーが序盤から主導権を握る。

 スタート直後に2番手へ進出したジロラミのアウディは、前方で争うガブリロフとセルジオ・ロペス(RC2ジュニア・チーム/クプラ・レオン・コンペティションTCR)に対し、パラボリカ立ち上がりから先頭走者のインサイドにマシンをねじ込んでいく。

 背後では3番手にバルダンが浮上し、首位ジロラミを追う展開に変わると、数字上の選手権ライバルであるトム・コロネル(コムトゥユーDHLチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)は17番手発進で苦戦し、この時点で実質的なライバルは元王者のジョシュ・ファイルズ(ターゲット・コンペティション/ヒョンデ・エラントラN TCR)のみとなる。

 その後、バルダンはトラックリミット違反で降格し、ファイナルラップ目前にはアスカリのシケインで高速クラッシュが発生して赤旗終了となり、ジロラミの勝利と2位ガブリロフ、3位ロペスのリザルトが確定した。

「昨日に続き今日も最後は混沌とした展開だったが、この勝利は本当に本当に重要な勝利になった」と、最終戦ではわずか7点獲得で王座が決まる状況に持ち込んだジロラミ。

「雨の前日は重さに対し適切なセットアップが決められなかったが、チームは懸命の作業で日曜に快適なクルマを用意してくれた。ここ(TCRヨーロッパ)での僕の戦略は、明らかにチャンピオンシップを最優先に考えることだが、まず第一に、その瞬間に心を向けることだ。最終戦は予選で7点を獲得することにすべてを賭ける。今季はこの戦略がうまく機能しているし、このままプッシュし続ける。110%こそがチャンピオンシップに勝つための唯一の方法だと思っている」

 シーズン最後の週末は、10月14~15日にスペイン・バルセロナで雌雄を決する。

レース2はクリム・ガブリロフ(ボルケーノ・モータースポーツ/クプラ・レオン・コンペティションTCR)が最前列でスタート
レース2はクリム・ガブリロフ(ボルケーノ・モータースポーツ/クプラ・レオン・コンペティションTCR)が最前列でスタート
僚友のトラブルしか「逆転タイトルの勝機はない」と語っていたトム・コロネル(コムトゥユーDHLチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)
僚友のトラブルしか「逆転タイトルの勝機はない」と語っていたトム・コロネル(コムトゥユーDHLチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)
このレース2での勝利で、フランコ・ジロラミ(コムトゥユーPSSチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)がほぼタイトルを手中に収めた
このレース2での勝利で、フランコ・ジロラミ(コムトゥユーPSSチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)がほぼタイトルを手中に収めた