2022年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第9戦決勝(31周)が10月29日に鈴鹿サーキットで行われ、5番グリッドから好スタートを切った笹原右京(TEAM MUGEN)が逆転で今季2勝目を飾った。ポールポジションからスタートした野尻智紀(TEAM MUGEN)は笹原に続く2位フィニッシュを果たし、翌30日の最終戦を残してドライバーズタイトル獲得を果たした。そして1-2フィニッシュを飾ったTEAM MUGENは初のチームタイトル獲得。最終戦を残して両タイトルが確定することとなった。3位には終盤に怒涛の追い上げを見せた佐藤蓮(TEAM GOH)が初表彰台獲得となった。
気温19度、路面温度30度というコンディションで迎えた第9戦決勝。予選時よりもやや強い風を感じるなか、ポールシッターの野尻はポジションをキープしたまま1コーナーを通過したが、フロントローの宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)は出遅れてしまう。3番手スタートの大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)が宮田をかわして2番手に浮上、その後ろについたのが、こちらも抜群のスタートダッシュを切った笹原だった。大湯と笹原の2台はオープニングラップからサイド・バイ・サイドのバトルを繰り広げたが、4周目に入ったホームストレートでオーバーテイクシステム(OTS)を作動させた笹原が大湯をかわして2番手に浮上した。
オープニングラップは随所で激しい戦いが展開された。坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)、関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)の5番手争いは、日立Astemoシケインで関口がいったん坪井をとらえるも、クロスラインをとった坪井が再びポジションを取り戻す。関口は3周目のシケインで再び坪井に並びかけると、今度はホームストレートでOTSを作動。今度は完全に坪井を抜き去り5番手に浮上した。
TEAM MUGENの2台は1秒前後の差をキープしながら、徐々に3番手大湯以降を突き放していった。野尻を攻略するところまではなかなか差を詰められなかった笹原は、ピットウィンドウが開いた10周終了時点でいち早くピットイン。チームは7.3秒というタイムで笹原を送り出した。わずかに作業が遅れ、同じタイミングでピットインした大湯にピットロード上で迫られる場面もあったが、コース復帰するとアウトラップでプッシュ。大湯との差を広げて後半スティントに入った。
野尻はこの翌周にピットイン。笹原よりも0.7秒ほど早い作業時間でピットを後にし、ピット作業を終えた組の中ではトップでコースに復帰した。笹原とはホームストレート半分ほどのギャップがあったが、すでにタイヤが温まっている笹原はOTSも使って猛追。デグナーカーブで背後に迫ると、NISSINブレーキヘアピンで野尻のインを刺し、実質の首位におどり出た。5番手を走行していた関口も同じタイミングでピットイン。大湯の後方に復帰している。
上位陣でステイアウトを選択していたのは宮田。前方がクリアになったところで、笹原とのギャップを広げようと1分41秒前半のタイムを並べていく。一方の笹原は前方にペースの遅い車両が出てきたことでややタイムを落としたが、それでも27~28秒の安全マージンをキープしていた。
周回数も減っていき、宮田のターゲットは笹原から、大湯、関口といった表彰台争いに移り、25周を終えたところでピットイン。ところが左リヤのタイヤ交換に手間取り大きくタイムロスを喫してしまう。結局、大湯、関口、佐藤の後方、6番手でコースに復帰することとなった。
最後までタイヤ交換を遅らせていた平川亮(carenex TEAM IMPUL)が27周を終えてピットへと舵を切り、これで笹原が名実ともにトップに浮上する。野尻との差は5秒ほどに広がっていたが、残り4周でさらに8秒以上まで広げる快走を見せ、堂々のトップチェッカー。第6戦富士大会に続き、今季2勝目をマークした。
トップチェッカーはかなわなかったものの、チームメイトに続き2位でフィニッシュした野尻は、自力でシリーズチャンピオンを決定。2007年、2008年の松田次生以来となる、国内トップフォーミュラでの連覇を達成した。また、笹原と野尻が1-2フィニッシュを達成したことで、TEAM MUGENは最終戦を残して初めてのチームタイトル獲得を成し遂げた。
また終盤は3位争いが注目を集めた。大湯、関口よりも遅い19周終了時点でタイヤ交換を行い、2人に対しややマージンのある佐藤が猛追劇を見せたからだ。26周目の130Rで関口の背後に迫った佐藤はシケインでアウト側から並びかけるが、関口も必死のレイトブレーキングで死守。
しかし、OTSを使って食らいついていった佐藤がホームストレートで関口をかわし4位に浮上した。佐藤は勢いそのまま大湯にも襲い掛かり、28周目のバックストレッチで一気に接近し、130Rでアウト側から並びかける。
だが大湯も一歩も引かず、佐藤は右タイヤをわずかにダートに落とし、日立Astemoシケインではいったん佐藤が引いた格好となった。しかし、OTSを作動させていた佐藤は、2周前の関口とのバトルを再現するように、ホームストレートで一気に大湯を抜き去り、これで表彰台獲得圏内の3位に浮上。そのままチェッカーを受け、嬉しい今季初表彰台獲得となった。