愛知県と岐阜県で開催されたWRC世界ラリー選手権第13戦『フォーラムエイト・ラリージャパン2022』。11月13日、ラリー最終日の戦いを終えて今戦の勝者となったティエリー・ヌービル、2位のオット・タナク、母国ラリーで3位を獲得した勝田貴元、そして優勝マニュファクチャラーであるヒョンデのチーム副代表ジュリアン・モンセが会見に登場しそれぞれの想いを語った。
優勝:ティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)
Q:ティエリー、シーズン最終ウランドでの優勝、おめでとうございます。ドラマチックな1日でしたね。読めない天気の中、朝一番のエルフィン・エバンスとのバトルは非常に激しいものとなりました。日本での優勝の満足度はいかがですか?
ヌービル(TN):「最高だ。今日は想像できる中でも最悪の1日で、勝利を争っているラリーの中で最悪の1日だった。とてもチャレンジングで、しかも新しいイベントだったからね」
TN:「今朝、非常に難しい競争を前に、難しいタイヤ選択がうまくいったことは、とてもうれしかった。オープニングステージからすでに路面には枯れ葉がたくさん落ちていて、ラリーが進むにつれてどんどん路面が汚れていったが、なんとか乗り切ることができた。幸い、その時にはリードが少し開いていたので、なんとかコントロールできたけど、最終ステージまで緊張の続くタフな1日だった。でも、ここラリージャパンで優勝できてうれしい」
Q:今朝のふたつ目のステージを終えた時には、非常にほっとされた様子でした。まず自分のタイムを見て、その後にエルフィン(・エバンス)に何が起こったかを理解したのでしょう、ガッツポーズが見られましたね。
TN:「そうだね。ハードにプッシュしてベストを尽くし、僕たちはこのステージで速いと気付いていたが、最後の下り坂ではどう走ったらいいか確信が持てなかった。ギャップを広げたかったので、できる限り速く走りたかった。少し心配していたが、その時点からは2位以下のマシンとのギャップがかなり大きいことが分かったので、あとは僕たちのコントロール次第だった」
Q:今シーズン、ヒョンデは難しいスタートを切り、シーズン中盤から良くなっていきました。興味深い1年となりましたが、来年は序盤から挑戦できるチームになっていると感じますか?
TN:「何とも言えない。今シーズン中は沈んでいくことが多かったが、シーズン中盤から2度ほど浮上し、勝利の機会を掴み始めたところだ。僕としては、それはターマックが中心で、とはいえ特に高速のイベントでは少し苦労しているが、それは今後の課題だ」
TN:「ここでの優勝、そしてスペインでの2位が、冬の間のチームのモチベーションになればと思っている。冬は本当に短く、あと2カ月足らずでモンテカルロでのラリーの準備に入るので、これを追い風として、この結果を活かして来年
からはもっと強くなりたい」
2位:オット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1)
Q:オット、ヒョンデから参戦する最後のラリーで2位を獲得しました。新しいラリーへの挑戦は大変なものでしたか?
タナック(OT):「先ほどティエリーが説明したように、試練だった。簡単ではなかった」
Q:今週末は、どの程度リスクを冒しましたか。エルフィンやティエリーから少し遅れていたので、結果を得るために限界に近い走りをしたのでしょうか?
OT:「それほどでもない。 僕にはベストタイムを競うのに必要な自信が欠けていたので、トヨタやティエリーは明らかにもっと速かったし、彼らと互角に競うことはできなかった。自信がなければリスクを冒すこともできないからね。自分たちにできることはとても上手くやったし、僕たちはそれ以上のことはできなかった」
Q:今朝は雨の心配もあり、タイヤ選択が注目されました。ヒョンデはハード、ソフト、ウエットの3種類すべてのタイヤを搭載したようですが、正しいタイヤ選択だったと思いますか?
OT:「今日に関しては正しい選択など存在しなかったと言えるが、僕たちの選択がもっとも安全だと思ったし、良いタイムも出せた。だから、総合的に見て僕たちはいい選択をしたと言える」
Q:木曜日の記者会見であなたの来年の計画について伺いましたが、その時点ではあまり話せることがありませんでした。その話が聞けるのはいつ頃になりそうですか?
OT:「今のところ何も決まってない。これからだ」
3位:勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)
Q:タカ、ホームイベントでの表彰台獲得おめでとうございます。これはこの週末のあなたの目標であり、とても難しい状況の中で達成することができました。今どんな気分ですか?
勝田(KT):「そうですね、本当に特別な日ですね。おっしゃるとおり、表彰台に上がることが目標でした。一時はちょっと苦しいこともありましたが、今はこうしてここにいるわけですから、チームとサポーターの皆さんにすごく感謝しています。彼らからすごくモチベーションを与えられました。本当に感謝しています」
Q:終わってみればあなたがトヨタ勢のトップでした。あなたにとってもすごく特別なものだと思います。イベントが始まる前、どれほどのプレッシャーを感じていたのでしょうか? 今年いちばんのプレッシャーでしたか?
KT:「かなりのプレッシャーはありましたが、また違った種類のプレッシャーでした。でも大丈夫だった。僕の周りにはいい人たちがたくさんいます。彼らのおかげで楽になれるので、すごく感謝しています。チームにとってはとても大きな週末になったし、もちろん、ヒョンデ・モータースポーツを祝福します。来年はぜひ僕たちがリベンジしたいですね」
Q:来年のことについて少し聞かせてください。チーム代表のラトバラはあなたがケニア以外でも表彰台をとってほしいと言っていました。そして、得意にしているケニア以外のどこかで獲得するのを見てみたかった、と。それが、ついに日本に帰ってきて実現しましたが、来年の目標は何ですか? あなた個人としての目標です。
KT:「そうですね、僕自身としての目標は、もっと自信をつけることですね。ポルトガルはあともう少しのところで表彰台に立てなかったので、特にトリッキーなコンディションでもっと改善していく必要があるし、こうしたコンディションではまだまだ苦戦しています。本当に思いきりプッシュすることが僕には必要になるでしょう」
優勝マニュファクチャラー:ジュリアン・モンセ チーム代表代行(ヒョンデ・シェル・モビスWRT)
Q:ジュリアン、ここトヨタのホームタウンでワン・ツー・フィニッシュを達成し、とても満足しているのではないでしょうか。チームにとっても最高のシーズンの締めくくりとなりますね。
モンセ(JM):「そうだね、ここ日本で勝てたことは、断然大きなモチベーションになったよ。シーズンのスタートはとても難しいものだった。モンテカルロはかなりトリッキーで散々だった、ケニアも同様いくつか危ない場面があった。それでも我々は頑張って取り組み続けてきた、そしてプッシュし続けた」
JM:「そして絶対あきらめなかった。やるべきことはたくさんあるが、モンテカルロの後、誰も予想していなかったことで、我々は一緒にうまくやれると思っている。もちろん、我々の目標は間違いなく選手権タイトルをとることだから、来年につなげるためにこれは悪い結果ではないね」
Q:WRCチームにはオフシーズンがほとんどなく、あっと言う間にに来年の準備が始まるわけですが、あなたはいくつかの困難な時期を経てチームの舵をとってきました。代表代行としてシーズンを通して参加し、大変な1年となりましたね。あなたにとってそれはどのようなものでしたか? 自分が変わったように感じますか? 特に白髪が目立っているようには見えないので、そこまでストレスにはなっていないかと。
JM:「そうだね、個々人の仕事だけではなく、チームとしてものごとを考えなくてはならないが、全員が同じ方向を向くのは必ずしも簡単なことではない。でも、このポジティブな勢いが、来年またシーズンが始まる時に一歩前進する助けになることを願っている。つまり、来週少しは休むことはできるが、次に向けての開発に取り組んでいるし、そうこうしているうちにモンテカルロなので、休んでいる暇はあまりないだろう」
Q:最後の質問です。オットがチームを去ります。彼の後任は誰になるのでしょうか? その他にもドライバーの移動はあるのでしょうか? もしあるのならいつ発表されるのでしょうか?
JM:「その質問に対しては誰もが同じ答えを知りたがっていると思うが、今日発表できることはない。最終的なものには近づいていて、数日後にはその質問に対する答えが得られるはずだ。でも今はまず日本でこの瞬間を楽しまないとね」