2022年、WRC世界ラリー選手権に新しい歴史が刻まれた。トヨタのカッレ・ロバンペラが、22歳と1日という新記録でシリーズ史上もっとも若いワールドチャンピオンとなったのだ。
これまでのレコードは1995年にWRC王者となった故コリン・マクレーの27歳と109日であったことから、その更新幅の大きさには驚くばかり。しかし、今季のロバンペラの活躍を見る中でもうひとつの驚きとなったのは、ステージ上位5台のクルーとマニュファクチャラーにボーナスポイントが付与される“パワーステージ”でのずば抜けたスピードだった。
速さに関しては2020年のトヨタ加入以前から“神童”と呼ばれるほど評価されてきたが、WRCトップチームで過ごす2年間の間にその才能はより研ぎ澄まされていった。そこに強さも備えた次世代の“フライング・フィン”は、トップカテゴリー3年目となった2022年シーズン、手がつけられないレベルに達する。
ロバンペラはキャリア3勝目となった第2戦スウェーデンでの優勝を皮切りに、クロアチア、ポルトガルと3連勝をマーク。第5戦イタリアの5位を挟み、中盤戦のケニアとエストニアでふたたび連勝を飾りシーズン前半7戦で計5勝を挙げてみせた。
後半戦はアクシデントによって最終戦『ラリージャパン』を含む3つのイベントで下位に沈んだものの、第11戦ニュージランドでは今季6勝目を飾りタイトルを確定させた。ロバンペラは最終的に、ランキング2位となったオット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1)を50ポイント引き離す圧勝劇を披露した。このような結果となった要因のひとつは、タナクが記録した3勝のちょうど2倍となる勝利数だが、同時にパワーステージの勝利数がライバルの3倍以上となっている点も見逃せない。
2021年シーズンもパワーステージ入賞者の常連だったロバンペラだが、今季は一段とパワーアップを果たした。全13戦中7つのイベントで、ステージベストタイム記録者(車)に与えられる5ポイントのボーナスポイントを持ち帰っている事実を確認すれば、2022年のロバンペラがいかに集中力を保っていたかが分かるはずだ。
なお昨年、ウルフ・パワーステージ・アワードを受賞したティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)は今季2位にとどまり、パワーステージでの獲得ポイントだけで新チャンピオンに20ポイント差をつけられた。僚友のタナクにいたっては24ポイント差となっており、選手権ポイントのギャップにおける約半分がパワーステージでの差であることが示されている。。
2022年シーズンのパワーステージ獲得ポイントは以下のとおりだ。
■2022年ウルフ・パワーステージ・アワード
1st | 2nd | 3rd | 4th | 5th | 6th | 7th | 8th | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
K.ロバンペラ | T.ヌービル | O.タナク | E.エバンス | C.ブリーン | S.オジエ | 勝田貴元 | S.ローブ | |
Rd.1 モンテカルロ | 5 | 3 | – | 4 | – | 1 | – | 2 |
Rd.2 スウェーデン | 4 | 3 | 5 | – | 1 | – | 2 | – |
Rd.3 クロアチア | 5 | – | 4 | 3 | 2 | – | – | – |
Rd.4 ポルトガル | 5 | 3 | 2 | 1 | – | – | – | – |
Rd.5 イタリア | 4 | 5 | – | 3 | – | – | 1 | – |
Rd.6 ケニア | – | 5 | – | – | – | 3 | – | 4 |
Rd.7 エストニア | 5 | – | – | 4 | – | – | 1 | – |
Rd.8 フィンランド | 5 | 1 | 2 | 3 | 4 | – | – | – |
Rd.9 ベルギー | 5 | 3 | 2 | 4 | – | – | 1 | – |
Rd.10 ギリシャ | 4 | – | 5 | – | 3 | – | – | – |
Rd.11 ニュージーランド | 5 | 1 | 4 | – | – | 3 | – | – |
Rd.12 スペイン | 3 | 4 | 2 | – | – | 5 | 1 | – |
Rd.13 日本 | – | 2 | – | – | 5 | – | – | – |
Total | 50 | 30 | 26 | 22 | 15 | 12 | 6 | 6 |