DTMドイツ・ツーリングカー選手権の運営団体であるITRが、同シリーズの売却の可能性を含め、その将来についてADAC(ドイツ自動車連盟)と交渉していることが明らかとなった。
業界筋によれば、『ADAC GTマスターズ』の主催団体でもあるADACは、GT3レギュレーションでの2年目のシーズンを終えたばかりのDTMを買収する可能性もあるという。
まだ両者の間での契約は成立していないものの、DTMの広報担当者はSportscar365の取材に対し、交渉が行われていることを認めた。
ITRの声明には、「我々は現在、来年度に関して話し合いを行っている」と記されている。
「我々はADACと話し、将来的に一緒に実現できる可能性のある相乗効果を検討していることを認める。とりわけ、参加チームとパートナーの利益のために」
話し合いは以前から行われていたとのことだが、ワーケンホルスト・モータースポーツが最近表明したDTMからGTマスターズへの転向は、シリーズ売却の可能性とは関係がないとされていることに留意する必要がある。
この取引が成立した場合、それがDTMの将来にとってどのような意味を持つかは不明だ。ただ、DTMが2021年にGT3へと切り替わって以来、このふたつのシリーズはかなりのレベルでクロスオーバーしている。
DTMはシングルドライバーであるのに対し、GTマスターズでは1台あたりふたりのドライバーを採用するなどの違いはあるものの、ふたつのチャンピオンシップは概ね同様のフォーマットを共有している。
また、DTMは欧州の主要なスポーツカーレースシリーズの中で、2023年のカレンダーをまだ公表していない最後のシリーズであることにも、特筆すべき点だ。
同シリーズは2017年より、長年シリーズを牽引してきたハンス・ベルナー・アウフレヒトに代わってITRの会長に就任した、ゲルハルト・ベルガーの指揮下に置かれている。
ベルガーの在任中、日本のスーパーGTシリーズと提携を結ぶ中で、シリーズは『クラス1』車両規則を採用し、2019年11月には富士スピードウェイでの交流戦で、両シリーズの車両が競ったこともあった。
しかし、GT3レギュレーション適応前には、基幹メーカーであるメルセデスとアウディがそれぞれ2018年末と2020年末にファクトリー活動を終了し、シリーズを衰退期に導くことになった。
2021年にGT3規則が導入されると車両台数が回復し、フェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェ、マクラーレンが新たに参戦するなど、シリーズに好転の兆しが見えた。また、アウディとメルセデスもプライベーターとしてシリーズに復帰している。