2022年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第10戦決勝が10月30日に鈴鹿サーキットで開催され、2度のセーフティカー(SC)が導入される荒れた展開のなか、ポールポジションからスタートした野尻智紀(TEAM MUGEN)が一度もトップを明け渡すことなくポール・トゥ・ウィンを達成し、今季2勝目でシーズンを締めくくった。2位は大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が今季初表彰台獲得。3位には宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)が続いた。
スタート直前の鈴鹿サーキットは、気温21度、路面温度が32度まで上昇。やや傾きかけた日ざしのなか、31周の決勝レースがスタートした。ポールスタートの野尻に続いて2番手で1コーナーに入っていったのは3番手スタートの大津。これに4番手スタートの笹原右京(TEAM MUGEN)が続き、2台の先行を許した宮田は4番手に後退した。
その直後、1コーナーで挙動を乱した福住仁嶺(ThreeBond Drago CORSE)がコースアウト。タイヤバリアにヒットしてしまう。ドライバーは無事だったが、車両回収のためにオープニングラップからSCが導入されることとなった。
車両回収はすぐに終了し、レースは3周目に再開された。野尻と大津は順当にリスタートを切ったが、笹原はシケインのあたりで失速してしまい、順位を下げることに。笹原をかわした宮田が3番手に戻り、4番手に上がった坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)の後方、笹原は5番手となった。なおこのリスタート直前、佐藤蓮(TEAM GOH)がシケインでコースオフを喫し最後尾に下がっている。
トップの野尻はリスタート直後からいきなりハイペースで周回。3周目には大津以降が1分41秒台のタイムを出しているなか、ただ一人1分39秒台をたたき出し、1周で大津との差を1.9秒まで築くと、その後も1分40秒台のラップタイムを連発して、9周目には6秒近くまでその差を広げていった。
ピットウィンドウが開いた10周終了時点で、約半数の車両がピットイン。上位陣では笹原がタイヤ交換に向かい、上位4台はステイアウトを選択した。翌周は大津と坪井がピットイン。アンダーカットを狙う笹原がプッシュして差を縮めてくる中、坪井はギリギリで笹原の前でコース復帰。
すでにタイヤのウォームアップが済んでいる笹原はS字コーナーまでで一気に坪井の背後に迫るが、坪井は何とかNISSINブレーキヘアピンまでポジションをキープ。笹原はテール・トゥ・ノーズを保ったまま130Rに進入し、シケインでインを伺うが、ここで2台は接触し、フロントウイングにダメージを負った笹原はスピードを緩めながらピットロードへと入ってくる。
笹原はタイヤ交換を終えてすぐ、イレギュラーの2度目のピットインで大きく順位を下げることになったが、同じタイミングで今度は松下信治(B-Max Racing Team)がシケインでクラッシュ。ジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)とのバトルで接触したことが原因で、レースは2度目のSC導入となった。
このSC導入タイミングで、ステイアウトしていた全車が一気にピットイン。野尻は左リヤタイヤの交換でやや時間をとったものの、トップを守ってコース復帰した。同じタイミングで宮田もタイヤ交換に入ったが、ピットロードを抜けコース出口のホワイトラインに差し掛かったところで、一足早くピット作業を済ませていた大津が宮田を抜き去っていく。これで大津は2位に返り咲き、宮田は3位へと後退した。
全車のピットインが終わり隊列が整理されたところで、トップは野尻。大津、宮田、サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)、坪井、平川亮(carenex TEAM IMPUL)というトップ6になっている。
フェネストラズは平川よりも1つ後ろのグリッドからのスタートだったが、1度目のSC導入後、リスタートで平川に接近すると、4周目のシケインで並びかけてホームストレートで逆転。2台は13周終了時点で同時にピットに向かったが、コース復帰の時点で坪井が間に割って入り、フェネストラズは4位、平川は6位となっていた。
18周目に2度目のリスタートを迎え、ここからレースは終盤に入っていくが、リスタート直後の接近戦で白熱したのは坪井VS平川の5位対決。スプーンカーブの入り口で一気に坪井のインに切り込んだ平川がポジションアップに成功し、不意を突かれた形の坪井は130Rで山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)にかわされてさらにポジションダウン。
坪井はペースが戻らないのか、翌周の1コーナーでは大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)にも先行を許し、21周目にはポイント獲得圏内ぎりぎりの10番手まで後退してしまった。
22周目からは、坪井を先頭とした10位争いがヒートアップ。23周目のシケインで関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)が坪井をかわしていったん10番手に上がるも、続くホームストレートではオーバーテイクシステム(OTS)を使って坪井が順位を取り戻す。
2台が抜きつ抜かれつの争いを続けている間に後方からは小林可夢偉(KCMG)が近づき、3台が1パックとなってポイント獲得争いが展開された。勝負は26周目に決着。直前のシケインで関口がわずかに坪井の前に出たが、最終コーナーを回ったところではスリップストリームを使って坪井が関口に並びかける。その2台分のスリップを使って一気にスピードを乗せてきた可夢偉が、2台をホームストレートのイン側から一気に抜き去り、これでポイント獲得圏内に浮上した。
中団の激しい争いをよそに、トップの野尻は快走を続ける。後半戦に入っても唯一1分40秒台前半から半ばのタイムを並べ続け、大津との差をどんどんと広げていった。
野尻はOTSも作動させながら、20周目には、序盤に自らが記録したファステストラップを塗り替えて見せると、最後までプッシュの手を緩めることなく走り切り、今季2度目のトップチェッカーを受けた。大津は野尻と6秒差でフィニッシュし、今季初表彰台獲得。3位は宮田となった。4位にはフェネストラズが入り、平川とのランキング2位争いを制した。
シリーズタイトルは前戦で決着がついたが、最終戦まで持ち越されたのはルーキー・オブ・ザ・イヤー争い。第9戦で表彰台を獲得した佐藤が一歩リードした状態で迎えた最終戦は、三宅淳嗣(TEAM GOH)が8位フィニッシュで3ポイントを獲得したが、佐藤にはあと4ポイント届かず。佐藤がルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。