アウディは9月14日に声明を発表し、2022年のDTMドイツ・ツーリングカー選手権のシーズン終了とともに、ニコ・ミューラーがアウディスポーツを離れると明らかにした。声明のなかでアウディは、ミューラーがプロトタイプレースやフォーミュラEの世界で今後他のチャンスを追求できるようにするため、今季限りで契約を終了させることに両者が合意に至った、としている。
アウディは先日、F1世界選手権への参入発表とともに、中断していたLMDhプログラムの廃止を正式決定したが、これがスポーツカーレースでの将来を重視するミューラーの離脱の引き金となった形だ。同様に、これまで長きに渡りファクトリードライバーを務めてきたレネ・ラストもアウディを離脱し、BMW陣営へと移籍することがすでに発表されている。
スイス籍のミューラーは2014年にアウディのDTMのラインアップに入り、2016年の初優勝を皮切りにこれまで11勝をマークしてきた。ミューラーは、とりわけクラス1規定時代にはタイトル争いに加わるまでに成長し、2019年と2020年はいずれもラストに次ぐ選手権2位を獲得している。
さらにミューラーは、フォーミュラEにおいてテスト兼開発ドライバーとしてアウディに加わった。さらにアウディのカスタマーレーシング・プログラムにおけるファクトリードライバーとしては、2015年のニュルブルリンク24時間レースで優勝を遂げている。
今季はチーム・ロズベルグからのDTMへの出場のほか、GTワールドチャレンジ・ヨーロッパのエンデュランスカップでは、バレンティーノ・ロッシ、フレッド・バービシュとともに参戦。スポーツカーにおいては、ベクター・スポーツのオレカ07でWEC世界耐久選手権のLMP2クラスにも参戦中だ。
また、2023年についてはフォーミュラE世界選手権に参戦するチーム・アプト・スポーツラインと契約している。
「レネ・ラストと同様、ニコ・ミューラーももともとは我々のLMDhプロジェクトのドライバーとして起用されることになっていた」とアウディモータースポーツのボス、ロルフ・ミヒルは述べている。
「ニコはLMP2クラスにおいて、プロトタイプレースのための集中的な準備を行なってきた。フォーミュラEに加えて、ニコはル・マンとプロトタイプの世界において、自分の未来を見出している」
「現時点で我々は彼にその夢を提供することができない。したがって、非常に重い気持ちで彼を手放し、彼の夢を実現する機会を与えることにした」
今季のDTM最終戦は10月7〜9日、ドイツのホッケンハイムで行われる。このレースをもって、両者の8年間にわたる関係に終止符が打たれることとなる。
ミューラー本人は、「とても難しい決断だった」と自身の去就について述べている。
「アウディは僕に、プロのモータースポーツに参入するチャンスを与えてくれた」
「アウディには多くの恩があり、僕はアウディというブランドとそのクルマの大ファンだ。また、スイスのアウディとの協力関係は常に素晴らしく、僕にとって非常に特別なものだった」
「僕はまだモータースポーツにおける目標を持っているが、残念ながらそれはアウディでは実現できない。F1に参戦するアウディには、現在他に優先事項がある。だから、僕にさらなる成長の機会を与えてくれたロルフ・ミヒルには、とても感謝している」
ミューラーは、WECのプジョーのハイパーカープログラムに移籍することが決まっているものとみられる。
フランスの『Endurance-Info』は、早ければ今年11月の最終戦バーレーンにおいて、94号車プジョー9X8をドライブするジェームス・ロシターと交代する可能性があると報じている。