体制継続の2023年。ライバル“激増”時代に向け「さらに改善を進めていく必要がある」と小林可夢偉TGRチーム代表

 11月25日、トヨタGAZOO Racingは2023年のWEC世界耐久選手権参戦体制を明らかにした。2台のトヨタGR010ハイブリッドを擁し、2022年シーズンにダブルタイトルを獲得したトヨタは、2023年はより困難な戦いへと挑むことになる。フェラーリ、ポルシェ、キャデラックといった新たなライバルたちが、最高峰ハイパーカークラスに参戦を開始して来るからだ。

 体制発表に際し、2022年に引き続き7号車のドライバーとチーム代表を兼任する小林可夢偉、そして5人のドライバーは、激戦が予想される2023シーズンに向け、次のとおりコメントを発表している。

TOYOTA GAZOO Racing、2023年のWEC参戦体制を明らかに。ドライバー6名に変更なし

 WEC世界耐久選手権に参戦するTOYOTA GAZOO Racing(TGR)は11月25日、2023年の参戦体制を発表した。来季も引き続き2台の『トヨタGR010ハイブリッド』をシリーズに投入。そして2022年と同じ6名のドライバーを継続して起用し、新たなライバルが増えるハイパーカークラスでのタイトル防衛を目指す。

■リザーブドライバーは発表されず

WECハイパーカー3連覇を目指すトヨタの懸念。新しいライバルに対し「後手に回っている」と技術責任者

 TOYOTA GAZOO Racingヨーロッパのテクニカルディレクターであるパスカル・バセロンは、日本のメーカーがWEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに参戦するライバルメーカーに比べ、自分たちはテストの面で「後手に回っている」と考えている。

 昨シーズンに続き2022年もダブルチャンピオンを獲得したトヨタは、2023年にトヨタGR010ハイブリッドで3年目のシーズンを迎える予定だ。その来シーズンはLMDhカーでファクトリープログラムを行うポルシェとキャデラック、そして、先月発表された新型LMH規定車『499P』でプロトタイプレースに復帰するフェラーリと競争を繰り広げることになる。

プジョー9X8は軽量化、トヨタは出力微減の調整。WEC最終戦バーレーンのBoPが発表

 今週11月10日に開幕するWEC世界耐久選手権2022年シーズンのフィナーレに向け、ハイパーカークラスとLMGTEクラスのBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)が発表された。トップクラスを戦う『プジョー9X8』は、第6戦バーレーンで軽量化が認められた一方、前戦富士6時間レースで圧勝したトヨタのハイパーカーは若干の出力制限を受けている。

 FIA国際自動車連盟が発表したハイパーカーBoPテーブルによると、プジョーの最低重量は1049kgとなっており、第5戦富士の設定から12kgの軽量化が図られている。一方、“ウイングレス”のハイパーカーはスティントあたりの最大エネルギー量が1MJ減り908MJとなった。

フェラーリ499Pがハイパーカー規定を選んだ“必然”。バッテリーにはF1の技術も【発表会現地情報】

 10月29日、フェラーリは2023年のWEC世界耐久選手権に投入する新型ル・マン・ハイパーカー『フェラーリ499P』を正式発表した。

 この新型車両が生まれた背景や、参戦体制の見通しなどについて、 イモラ・サーキットにおける発表会に出席したライターの大谷達也氏が、ル・マン・プロジェクトを率いるフェラーリ首脳に直撃。流麗なプロトタイプカーがLMDhではなくル・マン・ハイパーカー(LMH)規定を選ぶに至った理由などが、明らかとなった。

■一見して「フェラーリだ!」と分かることの重要性

フェラーリ、50年ぶりのル・マン・プロトワークスカー『499P』を正式発表。2023年WECに投入

 2022年10月29日、フェラーリは2023年のWEC世界耐久選手権で予定しているトップレベルのスポーツカーレースへの復帰に先立ち、新しいハイブリッドパワートレインを搭載したル・マン・ハイパーカー『フェラーリ499P』を正式発表した。

 イタリアのメーカーは29日(土)夜、イモラ・サーキットで開催されたイベント『ファイナル・モンディアリ』の中で、このフェラーリ499Pを公開。LMH規定の新型プロトタイプカーはゲストの間を縫ってキャットウォークを進み、ステージ上のターンテーブルでお披露目された。

イソッタ・フラスキーニ、2023年の参戦を目指す新型ル・マン・ハイパーカーを突如発表

 イタリアのクラシックカー・メーカー、イソッタ・フラスキーニは10月21日、2023年に100周年大会を迎えるル・マン24時間レースへの参戦を予定している、ル・マン・ハイパーカー(LMH)のイメージ画像を発表した。

 1900年に創業、初期のレーシングカーや高級車の製造で有名なミラノを拠点とする同社は、2023年4月下旬にスパ・フランコルシャンで行われるWEC世界耐久選手権第3戦からの参戦を目指しており、2月には実車を発表する予定だという。

盛況の陰で居場所と“優秀なプロ”を失うジェントルマン。2023年は「100%、WECから離れる」

 WEC世界耐久選手権のLMP2プロ/アマクラスに参戦するジェントルマンドライバー、フランソワ・ペロードは、2022年限りでWECから撤退し、ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズへと活躍の場を移すことを明言した。

 LMGTEアマクラスで3度チャンピオンに輝き、今季LMP2へと復帰したペロードはこれまでWECとELMSに参戦していたが、来季からELMSへと集中するという。これは、WECのLMP2プロ/アマクラスが廃止されるとの予想に基づき、先回りした決断だ。

ロシターと交代。プジョー加入のニコ・ミューラー、WEC最終戦でのハイパーカーデビューが決定

 プジョーは、11月10~12日に開催されるWEC世界耐久選手権のシーズンファイナルで、新加入のニコ・ミューラーがフランスのLMH(ル・マン・ハイパーカー)メーカーからデビューすることを確認した。

 Sportscar365が以前報じたように、先月プジョーに加入し2023年のレースシートを獲得した元アウディワークスドライバーであるミューラーは、来月のバーレーン8時間レースでジェームス・ロシターに代わって94号車のプジョー9X8をドライブすることになった。

ハイパーカー&GT3盛況の余波でLMP2が消滅? クラス間のバランスに悩むWEC

 WEC世界耐久選手権のフレデリック・ルキアンCEOは、LMP2クラスが2023シーズン終了以降に段階的に廃止されるという兆候が漂うなか、2024年のグリッドについては「バランスを検討する」必要がある、と述べた。

 トップカテゴリーであるハイパーカークラスへのエントリー数が増加すること、そして来季をもってLMGTE(アマクラス)が終了、2024年以降はGT3車両を用いたクラスへの高い関心が予想されることから、LMP2車両の活躍の場に影響が及ぶ可能性がある。

 ルキアンは、LMP2がル・マン24時間レースのグリッドには長期的に存在することは認めたが、それ以外のWECのラウンドでLMP2が除外されるかどうかについては明言を避けている。